【本】★★★★
題名:つかう本
著者:幅 允孝
(2009 / ポプラ社)
脳卒中のリハビリ施設の本棚から生まれた本。
本と医療の専門家が、リハビリに効く本を選び、使い方を紹介したユニークなガイドブック。アラーキーの『さっちん』、現代美術家の大竹伸郎さんの『ぬりど き日本列島』、ブルーノ・ムナーリの本や偉人の言葉などなど、普通にそそらる本ばかり。取り込むという視点はあっても、「使う」という視点ではあまり本を 読んだことがなかった。いろいろと触発させれてウズウズする。
入院して談話室の申し訳程度の本棚があったが、こんなに充実した図書館があればどんなにワクワクしたであろうに。自分の居場所を違った視点で教えてくれる 本に出会うと、人は変わっていくような気がする。
「ブックセラピー」という言葉を、今回はじめて知りました。
【ブックセラピーの可能性】
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
理事長・院長 橋本康子
「ライブラリーを作ろう」。大阪・千里に千里リハビリテーション病院を作ろうと思ったき、まず決めたことです。病院にはこれまで、患者さんが自由に本を読 めるライブラリーというのがあまり用意されていませんでした。病気を治すのに重要だ、とは考えられていなかったからです。
ただ、リハビリの病院は病気になった人が元の生活に戻るための準備をする場。顔を洗ったり、歯を磨いたり、介助なくひとりで歩き、食事もできる。そうした 日常生活の動作・行動の練習は、なるべく家と同じような、家で生活しているイメージがわきやすい環境でやる方が効果的です。そう考えたとき、どの家にもた いていある「本棚」が病院にもあっていいのでは、と感じたのです。
本を使ったリハビリに、常々興味を抱いていたこともあります。
リハビリというと器具を使って筋力をつけるといった、とにかく身体的なものばかりに目を奪われがちです。でも、目に見える障害があるということは、それと 同じくらい脳にもダメージを受けているということです。注意力や判断力、認知力、記憶力、それに感覚の機能が元気だったころとは違っているわけです。その 障害をどう回復させていくか。こうした目に見えない部分をリハビリするものとして、本が役立つのではないかと感心を持っていました。
なにしろ、本を眺め、読むことで昔に想いをはせることができます。一度も訪れたことのない場所にも行けるし、いろんな場面の想像をめぐらせたり、大きな感 動をもらえたりもする。そんな頭と心を適度に刺激してくれる本の力に、大きな可能性を感じています。
とはいっても、いったいどんな本をそろえたらいいものか、医療に携わる私たちだけでは皆目見当がつきませんでした。そこで、ブックディレクターの幅 允孝さんにお願いして「リハビリに効く本」を集めたライブラリーを作っていただきました。
開院してからは、多くの患者さんがライブラリーに足を運び、本を手にする姿をよく見かけています。本が患者さんの心をどこか和ませているようにも映りま す。そんなライブラリーの棚から、こんなすてきな本が生まれました。
まさに、本の専門家とリハビリの専門家が一緒に考えて作った本です。今後は、当院の患者さんたちにこの本を使ってもらい、その反応や効果などをじっくりと 見つめていこうかと考えています。精神面のリハビリは化学的に明らかにされていない部分も多く、研究途上の領域です。それだけに、本書が本を使ったリハビ リ、いわゆる「ブックセラピー」へのひとつの道筋になれば、嬉しいかぎりです。
(『つかう本』より)