Book Picks

【本】★★★★
題名:変身
著者:カフカ
出版社:新潮文庫

ある日、目を覚ますと自分が巨大な虫になっていた。なぜ虫に?なんてことには、一切ふれずに物語が進むんでいく。虫になった主人公ザムザ自身の変身のようで、実はザムザの変身をきっかけに「変身」する家族が描かれている。カフカの小説をはじめて読んでみたが、淡々しながら、ちょっと笑ってしまう切なさや不条理の世界。はじめて感じる奇妙な新鮮さがあった。

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Book Picks

【本】★★★★
題名:住宅巡礼
著者:中村好文
出版社:新潮社
発行:2000

20世紀の名作住宅を著者が実際に訪れ、感じたこと、解説、スケッチをまとめたルポタージュ。コルビジェの「小さな家」、フィリップ・ジョンソンの「タウンハウス」、アアルトの「コエタロ」など全部で9軒を解説している。名作と呼ばれる所以を突いていながらも、「居心地」にこだわる建築家の文章やスケッチには、心身ゆるむ温度あり。「ほっ」としてしまう。





この貴重な旅から、私は住宅設計が、建築的な知識や、専門技術だけでは対処しきれないことを悟りました。つまり、住宅を設計する建築家は、「人間の住処」に対する豊かな夢想力の持主でなければなりませんし、人の心をとらえる説得力とキャラクター(これをカリスマ性と読んでもよいと思います)も備わっていなければならないことを知ったのです。

そして、なによりも、人間の行動や動作をつぶさに観察し、複雑な心理の綾を読み解き、市井の人々の喜怒哀楽に共感できる柔軟な心をもった「人間観察家」でなければならないことを教えられました。

つまり、住宅の設計は、大学の建築科を卒業し、ちょっと小才がきくぐらいで出来るような手軽な仕事ではなく、計り知れないほど間口が広く、また奥深いものであることを、そして、だからこそ住宅設計が面白いのだということを、あらためて学んだことになります。

両親の住宅の設計から四半世紀の時が過ぎました。
住宅設計の道は遥かに遠く、私の「住宅巡礼」は、まだしばらく続くことになりそうです。

中村好文 (「住宅巡礼」あとがきより)

Book Picks

【本】★★★★
題名:空間の生産
著者:アンリ・ルフェーブル(訳:齋藤日出治)
出版社:青木書店
発行:2000

20世紀の偉大なる哲学者、社会学者、アンリ・ルフェーブルが書き上げた大著。哲学、思想学、言語学、建築学、社会学などの多方面の豊富な知識を基盤に、 都市やその空間を徹底的に研究分析し、批判理論を超えて、新しい「生産」コードを構築しようとしている。

空間に関して「生産」するという行為は、何を意味し、何が求められているのか、おぼろげながら輪郭は浮かんできたかも。




強調しておくべきことは、支配的傾向にとって代わることーーそれは以前には好ましいものとされていたーーで はなく、支配的傾向を逆転させることが必要だ、ということである。この逆転を果たすということは、生産物の研究(その研究が一般的であれ、個別的であれ、 記述されたものであれ、列挙されたものであれ)から生産の研究へと移行することである。それはマルクスの時代と同じ課題である。この課題を完全に証明する ことはできないにせよ、相当詳細に論じてみたい。


(中略)

(社会)空間とは、(社会的)生産物である。(p.65-66)

Book Picks

【本】★★★★
題名:影をなくした男
著者:シャミッソー(翻訳:池内紀)
出版社:岩波文庫
発行:1985

自分の「影」を魔法の袋と交換してしまった男の話。なくても支障がなさそうな「影」だけど、ないと奇妙に扱われるの点もなんだかユーモアがある。金銭では 買えない人間の心理が描かれている。フランスの貴族の家に生まれ落ちた作者が、フランス革命によって「祖国」を失ったのは本当の話。物語に秘められている 「影」の受け取り方は、読者次第ですね。

Book Picks

【本】★★★★
題名:パタン・ランゲージ
著者:C・アレクサンダー
発行:1977(邦訳1984年)

各国の美しい町並みや住まいを253パタンの言語として分析し、生き生きとした空間の本質に迫ろうとした一冊。都市計画的視点からはじまり、建物の細部に至るヒューマンスケールで終えている構成は、大小の相互関係をひとつの運動体として捉えてもらうため。要素ひとつひとつはとても普遍的な良さを持っているのですが、あくまでもこれらの言語を活用するのは、作り手次第ということなのですね。ソフトウェア開発者の間で本著が活用されているというのも、マクロ、ミクロ、そしてネットワークの構築という考え方が空間論であっても、共通してとても有効だと納得。むしろ、こちらの業種で活用されている方が多かったりして。

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【本】★★★★1/2
題名:藤森建築と路上観察
著者:藤森照信
発行:2006

第10回ヴェネチア・ヴィエンナーレ建築展2006日本館の帰国展の図録。初台のオペラシティで行われた展示は、藤森氏の魅力が力強く伝わってくると同時に、不思議な懐かしさがこみ上げてくる素晴らしいものだった。屋根にニラが生えている「ニラハウス」が表紙になっているのも美しく、そしてほほえましい。ちなみに現代美術作家、赤瀬川原平の自邸でもある。

本書の中で、建築史家、五十嵐太郎さんが藤森建築を下記のように述べている。だからこそ、海を越えてもなお、共通した懐かしさを多くの人に与えたのだと納得した。


藤森の建築は強い土着的な表現を発揮しながらも、どこにもない場所性を喚起している。つまり懐かしさを覚えるのだが、具体的な地域を指示するわけでもない。ゆえに、本人は「インターナショナル・ヴァナキュラー」だと説明している。(中略)藤森は、タンポポ仕上げの超高層計画も提案しているように、過去のノスタルジーに浸るだけの建築家ではない。さすがに建築史家だけあって、本人が的確に説明している。これまでは昔の伝統のグランドに戻って、今のグランドは面白くないぞと言う建築家はいたけれど、自分は現代のグランドを本気で逆走し、それが新鮮に見えたのだ、と。

(中略)

宮崎駿のSFアニメ映画『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラビュタ』の世界観が想起される。いずれも未来社会の廃墟において、テクノロジーが緑におおわれているからだ。藤森建築は、現代のグランドを逆走しながら、時間を早まわしにしている。つまり、過去ー現在ー未来という時間をかける建築なのだ。

(p.11)


中身箱の中には、趣きの違う冊子4冊と、「Yakisugi」というシールが張られた、焼杉のサンプルが入っている。持っているだけで、本当にうれしくなる図録です。

Book Picks

【本】★★★★
題名:藤森照信の特選美術館三昧
著者:藤森照信
出版社:TOTO版社
発行:2004

何がいいって、特選はもちろん藤森さんの文章がたまらない。独特の語りにウフフとなりながらも、読めばその建築をこの目で確かめたくなる。正規の名前以外 に、ひとつひとつ○○美術館と別名付き。色んな語りかたがあるけどこういう風に良さを語れる人は、本当にすごいなと思う。まだまだ行ったことのない所に、 思わず興奮する。