Book Picks

【本】★★★★
題名:映画的建築 建築的映画
著者:五十嵐太郎
(2009/ 春秋社)

建築と映画というのは目新しい関係じゃないけど、室内から架空都市まで話を展開させつつ、列挙されている映画タイトルに驚くばかり。次々と芋づる式に観た い映画が増えていく。映画を知っていれば、それだけ本著の理解が深まる。小津安二郎はもちろん、三谷幸喜の映画美術を担当する種田洋平論、リドリー・ス コットもヒッチコックも網羅しているが、知らない映画も多々あり。名映像空間へのガイドラインのよう。

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Book Picks

【本】★★★★
題名:小林・益川理論の証明
陰の主役Bファクトリーの腕力
著者:立花隆
(2009/ 朝日新聞出版)

この理論の凄さに遅ればせながら興奮する。お二人の人柄ばかりが取りただされる日本の報道レベルの低さに、著者が苛立ちを覚えるのもわかる。大半はチンプ ンカンプンだけど、その凄みが伝わるのは科学ジャーナリスト立花氏の腕力のたまもの。周長3kmの超ド級の巨大な実験装置Bファクトリー、理論立証に燃え る多くの研究者の情熱にも驚くばかりです。





面白いのは、小林・益川理論そのものであり、それが持つ意味である。20世紀物理学の大きな流れの中に小 林・益川理論を置いたときに見えてくるものである。そこにうかがわれる現代の物理観、宇宙観、科学的世界像の大いなる変貌である。

何が面白いところなのか

20世紀の物理学は、理論においても方法論においても驚くほど急速な変貌をとげ、20世紀のはじめと終わり(21世紀のはじめといってもよい)とでは、ま るでちがう世界(対象世界も学術的認識世界も)のことを語っているかのような印象すら受ける。

20世紀のはじめ、量子論も相対論もなかった。しかし20世紀が終わるころにはサイエンスのすべてが量子論と相対論の上に乗せられるようになり、量子論と 相対論なしには、なにも語れないようになった。相対論の世界で、20世紀中頃(私の学生時代)まではまだ、特殊相対論が正しいことはわかっているが、一般 相対論が本当に正しいかどうかはよくわからない、などといわれたりしていた。

しかし、20世紀が終わる頃までに、一般相対論の主な場である宇宙論、天文学の領域で、一般相対論の正さが次々に証明され、現代の宇宙像は完全に一般相対 論の上に立てられるようになった。ミクロの世界の物理である量子論は多くの人の手によって幅広く展開されたため、一口に総括できないほど多くの量子論があ る(本質は一つともいえる)が、20世紀後半、素粒子の世界を記述するために生まれた「場の量子論」の世界では、真空から粒子が突然生成して出現してきた り、日常空間に存在していた粒子が消滅してそこが真空になってしまったりする、といったことが普通に語られるようになっている。

ということは、科学技術の最前線では、真空とは何なのか、存在とは何なのか、無とは何なのか、生成とは何なのか、消滅とは何なのか、同一性とは何なのか、 といった、ほとんど哲学的といったほうがいい概念が物理学のリアリティの中で語られるような時代になったということだ。

小林・益川理論の面白さとは、そういう世界の面白さなのである。

(P.I-4-5)