Book Picks

【本】★★★★
題名:恋する西洋美術史
著者:池上英洋
(2008 / 光文社新書)

「恋愛」、それは永遠の謎のひとつ。その媚薬から西洋美術史を覗く。ギリシャ神話の奔放な神々は、今だったら完全な犯罪者だよな……という発想は、現代病ですよとツッコミが入る。中世夫婦生活のルールやら寝とられ男の話など、古代から近代までギュッと詰まった愛の形。キスひとつにしてもカノーヴァの彫刻、クリムトの官能的なものから、マグリットの覆面をした形式的なものを並べ、キスの魔力が失われているという説はとても興味深い。目次を眺めるだけでも面白いです。






目次

第一章  恋する画家たち
1-1 自らの作品に恋心を抱く ーピュグマリオン
1-2 愛された女たち
1-3 悪い男 ーピカソの色好み
1-4 憎悪に変わる愛 ーカミーユ・クローデル

第二章  愛の神話
2-1 ゼウス ー浮気性の最高神
2-2 クピドの矢
2-3 愛の女神
2-4 逃げる男と追う女
2-5 逃げる女と追う男

第三章  愛のかけひき
3-1 キス ー甘美な瞬間
3-2 恋文 ー気持ちの伝え方
3-3 女らしくあるために
3-4 男らしくあるために

第四章  結婚 誓われた愛
4-1 夫婦の肖像
4-2 カップリングと初夜
4-3 妻という仕事
4-4 不釣り合いなカップル

第五章  秘められた愛
5-1 夫婦の寝室
5-2 溢れる性愛
5-3 他人の妻は、蜜の味

第六章  禁じられた愛
6-1 金で買われる愛
6-2 同性愛とタブー

第七章  愛の終わり
7-1 嫉妬
7-2 離婚、死別
7-3 永遠の愛



どれもみな、愛、愛、愛のカタチ。

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Book Picks

【本】★★★★
題名:超・美術館革命 金沢21世紀美術館の挑戦
著者:蓑 豊
(2007 / 角川書店)

学生の頃、高速バスに乗り込みドキドキしながら美術館に着いた感覚が蘇ってきた。SANAAの手がけた画期的かつ活気的な空間に、いろいろな目的を持った人が集っていた。その風景に素直に感動している自分がいた。著者は、その革命ともいえる成功の引率者だが、単なるノウハウ本とは違う別次元の大切なことを語っている。そう感じるのは、人生で得たことをきちんと言葉にされているからなのかも。困窮する美術館のみならず、関わる地域全体がどうあるべきなのか、 21世紀のコミュニティの楽しい可能性を提示されている気がしてなりません。

小学4年生をターゲットに!本物をみせなければ人は育たない、美術は異文化コミュニケーション言語、ボランティア活動の日米の違い、集客のために知恵をしぼり経営哲学を取り入れること、そして心を豊にするためにたくさん本を読むことなど、大切なことを再認識させてくれる。こういう感触がある本に出会うと、とても嬉しくなる。事業でも人生でも、規模に関わらず結局はやるかやらないかの問題。物事の結果の差異は、実践、調整、継続の延長線上にあるだけなのだから。


日本人は本当に本を読まなくなった。本は心を豊にするのに、いかに大事なものか、言うまでもないだろう。テレビは瞬間的であって、ほとんど記憶に残らない。しかし、読んだ本のことは記憶に残り、蓄積され、心を豊に育てる。受動的に情報を受けとるテレビと違って、自分で活字を追っていけば、想像力もつくし、論理的考え方も鍛えられる。本は美術や音楽と並んで、人間の心を豊にする基本的ツールなのだ。

しかしながら、日本の子供たちは本を読む習慣を失ってしまった。それには、大人の責任もある。お父さんが仕事で疲れて家に帰ってくる。帰ると茶の間で、ビールを飲みながら、テレビで野球中継やサッカーをみる。そんな背中を毎日見せられていたのでは、子どもは本を読む気にならない。新聞でもなんでもいい、何か読んでいる姿を子どもたちに見せることだ。

(p.105-106)

Book Picks

【本】★★★★
題名:アーティストは境界線上で踊る
著者:齋藤環
(2008 / みすず書房)

精神科医が紐解く現代アーティスト23人たち、と切り口に惹かれる。主に美術手帖で連載されていたインタビューをまとめたもの。ときに第三者の批評がノイ ズ化してしまうときがある。本著が高い質を保っているのは、作家の肉声を収録していることが大きい。齋藤氏の解釈も含めテクストは量も盛り沢山。各章どれ も興味深いのですが、やはり個人的に好きな山口晃、杉本博司、高嶺格などを食い入って読んでしまった。

大きな収穫として、美術作家は創り出した作品と対峙し発展させていくことができるという点でアウトサイダー・アートとの絶対的な違いがあるという指摘に、 長年の問題が解けた快感を覚えた。

Book Picks

【moshimoshi-Books no.65:美術】
題名:西洋画人列伝
著者:中ザワヒデキ
出版社:NTT出版
発行:2001

著者がルネッサンスから20世紀美術で活躍した偉人達に成り代わり、紹介文がすべて一人称で書かれている。ダ・ヴィンチ、ベラスケス、ピカソ、ウォーホー ルなど総勢60名が、それぞれのポリシーや時代背景を語るのですが、何と言っても超人なりの悩み、人間臭さにぐいぐいと引き込まれてしまう。こういう美術 史の表現の仕方があったのかと驚きと同時に嬉しくなる。中ザワ氏お手製のCG図版や肖像画も見物です。





それでは、序文より


著者から見ても奇天烈な本に仕上がった感は否めない。本書が学術書なのか小説なのか、文芸書なのか美術作品なのか、はたまた専門書による啓蒙書なのか素人 ならではのアイディア本なのかは、おそらくどれでもないし、どれでもあるのだろう。本書が広く愛読されることを願う。

中ザワヒデキ

目次の偉人サブタイトルも傑作です。


ああ、遠近法とはなんと素晴らしいものか(ウッチェロ)
絵画は「世界を映す鏡」である(ダ・ヴィンチ)
森羅万象から生まれた「ダブルイメージ」(アルチンボルト)
いったい絵はどこからはじまるのか?(ベラスケス)
天使は描かない。なぜなら見えないから(クールベ)
その動き!その瞬間!(ドガ)
女は天使であり、そして娼婦でもある(ロセッティ)
花は眼球、蝶は霊魂(ルドン)
小さな嘘を重ねて大きな真実を作る(ボナール)
自然をつらぬく叫びを聞いた!(ムンク)
絵画とは、破壊の集積にほかならない(ピカソ)
あらゆるものには意味がない(デュシャン)
「実在主義のカウボーイ」だと?(ポロック)
僕は退屈なものが好きだ(ウォーホール)

などなど

Book Picks

【moshimoshi-Books no.64:テキスト】
題名:近代美術史テキスト
著者:中ザワヒデキ
出版社:トモズブックス
発行:1989

美術家の中ザワヒデキが眼科医時代に手がけたオール手書きの「近代美術史テキスト」。縦150x横105x厚さ3mmのコンパクトサイズでありながら、全 15章の内容は濃い。イラストレーションの分野で才能を発揮しただけあって、図版、文字など味がある。親しみやすさの中にも、鋭い刃が隠れている。

序文の文章に妙に納得する。




そもそも’歴史’とは何かと言いますと、それは過去の事実を受動的に記述する行為のことを指すのではなく、現在の目をもって、過去の本質を能動的に読み取る行為のことをいう筈です。ピカソが「セザンヌは素晴らしい!」というときはまさしくこの場合であり、ピカソがセザンヌに影響した(ピカソがセザンヌの存在をクローズ・アップした)という言い方が正しいのです。

前置きが長くなりましたが、要するに「現在の自分が歴史をつくる」ということが言いたかったのです。今回は、私は近代美術に関する歴史読本を書きましたが、この意味で本書は現在の私が創作した近代美術史です。アナタが創作した近代美術史とは若干異なるかもしれない。あるいは何年後かに私は全く違う近代美術史を創作しているかもしれない。

ーーでもとにかく、歴史とは、あるいはすべての人間の行為は、本来このように徹頭徹尾「現在の自分」から端を発しているのだという視点に立って、本書を読んでいただければ幸甚です。

1989. 初秋 中ザワヒデキ