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【moshimoshi-Books no.64:テキスト】
題名:近代美術史テキスト
著者:中ザワヒデキ
出版社:トモズブックス
発行:1989

美術家の中ザワヒデキが眼科医時代に手がけたオール手書きの「近代美術史テキスト」。縦150x横105x厚さ3mmのコンパクトサイズでありながら、全 15章の内容は濃い。イラストレーションの分野で才能を発揮しただけあって、図版、文字など味がある。親しみやすさの中にも、鋭い刃が隠れている。

序文の文章に妙に納得する。




そもそも’歴史’とは何かと言いますと、それは過去の事実を受動的に記述する行為のことを指すのではなく、現在の目をもって、過去の本質を能動的に読み取る行為のことをいう筈です。ピカソが「セザンヌは素晴らしい!」というときはまさしくこの場合であり、ピカソがセザンヌに影響した(ピカソがセザンヌの存在をクローズ・アップした)という言い方が正しいのです。

前置きが長くなりましたが、要するに「現在の自分が歴史をつくる」ということが言いたかったのです。今回は、私は近代美術に関する歴史読本を書きましたが、この意味で本書は現在の私が創作した近代美術史です。アナタが創作した近代美術史とは若干異なるかもしれない。あるいは何年後かに私は全く違う近代美術史を創作しているかもしれない。

ーーでもとにかく、歴史とは、あるいはすべての人間の行為は、本来このように徹頭徹尾「現在の自分」から端を発しているのだという視点に立って、本書を読んでいただければ幸甚です。

1989. 初秋 中ザワヒデキ