Book Picks

【本】★★★★1/2
題名:みっともない人体
著者:バーナード・ルドフスキー
(1977 /鹿島出版社)

人類学、神学、社会学等々、枠組みなど軽々と飛び越え、小難しく区切ってしまうことが、いかにもったいないかをルドフスキー特有の思考のコラージュは教えてくれる。人類の社会的美意識の変化を衣服から掘り下げてみる試み。中国の纏足、コルセット、着物の帯など不自然に身体を締め付ける美学の裏に潜むものを垣間みたり。クリストの作品、ファッション、民族衣装、古代から現代までの様々な現象が繋がっていくのに、快感を覚えてしまう。






人間だけが、自分の肉体をかえてみたいという衝動を感じるようだ。動物たちの本能はもっと健康なので、そん な要求を感じることはない。人体のかたちは、芸術家たちにとってももっと偉大なもの、すなわち神によってデザインされているが、神の趣味は必ずしもわれわ れの趣味とは一致しないのである。人間は、最終的なかたちとして創造された自分のイメージをそのまま満足して受け入れたことは一度もなかった。

(p.117)

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Book Picks

【本】★★★★★
題名:私の地球遍歴 -環境破壊の現場を求めて-
著者:石 弘之
(2002 /講談社)

環境汚染をテーマに125カ国を渡り歩き、人間社会の「ネガ」の部分を教えてくれる。生物学研究者、新聞記者のジャーナリスト、そしてひとりの人間として 目にした各国の物語は、「遺書」のつもりで書かいたという。言葉のひとつ一つが、じわじわと押し寄せてくる。繰り返される活動家の暗殺、乱獲、先住民の自 殺、先進国の欲望。知らないだけだとしても、消費者の無関心ほど残酷なものはないように思えてしまう。

宇宙船地球号の船底から水浸しが始まっている現在、一等船室に位置する日本も一緒に沈んでしまう。モノをみる、買う、考える、作る姿勢もここから始めない といけないようです。


アフリカ大陸の飢餓キャンプでの薪使用量削減のため、『改良かまど』がデザインされた。ボランティア団体によって普及活動が行われたが、広がらなかった。 結局、アフリカの風土では到底使える代物ではなかった。生活環境、気候などリサーチの尺度が狭いと、先進国的に『いいモノ』も押しつけになってしまう。脈 々と息づいてきた智恵には到底かなわない。どういう時間軸でどのような解決策を見出すかは、本当に難しい問題です。実際に配給している小麦や砂糖も同じ で、現地の人がこの配給で糖尿病になっている現実を始めて知りました。先進国で栄養学的に良かれとされている食材でも、何か違う気がしてしまう。

「救済」という名目の、現地の生活サイクルをかき乱すアンバランスな対策は、
一体何なんだろう。

Book PIcks

対称性【本】★★★★1/2
題名:カイエ・ソバージュ5: 対称性人類学
著者:中沢新一
(2004 /講談社選書メチエ291)

いよいよ『野生の思考』をめぐる旅の最終巻。学問や制度化されている仏教は別として、仏教そのものは宗教ではなく古代の対称性の思考が脈々と活きずいている思想。新たな関連性の発見は大きな収穫でした。人間が都合よく創り出した<一>の魔力が、どれくらい世界を覆っているのかが見えてくる。一神教の宗教間で綿々と続く対立、9.11や経済危機の先にあるべき現代の平和学のヒントが、対称性人類学にあるのかもしれない。ピンポイントで印象深かったのが、先住民たちの「自然智」「秘密智」という概念。育児や食事をしたりという日常生活で生まれてくる女性特有の知性が「自然 智」、男性が追い求める非日常的な知性が「秘密智」。人類学者と先住民の女性とのエピソードはなんとも興味深い。


何週間ものあいだ男たちがペヨーテの体験を求めて巡礼の旅に出ているあいだ、女たちは村に残り、冒険の旅に 出ている男たちの無事を祈っていました。そして、ようやくぼろぼろに疲れて戻ってきた勇気ある男たちを、女たちは村境に出かけて迎えます。そのとき出迎え に出た一人の経験豊富な物知りの女性に、人類学者が問いかけます。

「男たちはああやって貴重な知恵を求めて冒険に出ていきます。ところが、女の人たちは村でそれを待つだけです。なにか不公平ではありませんか。女性はそう いう知恵に近づくことを許されていないわけですから、差別があるのではないのですか。」

これにたいして村の女性が笑いながら、こう答えたそうです。

「男たちはかわいそうに、あんなにでもしなければ、知恵に近づくことはできないんだよ。ところは女は自然のままにそれを知っているのさ。」

すぐれた先住民の女性たちは、男たちがこっそりと手を入れようとしている念願の「秘密智」という目的地に着いてみると、そこにははじめから「自然智」が 待っていて、男たちの英雄的な行為を優しく迎えてあげるのだ、そんなふうにして秘密結社的な「秘密智」とナチュラルな「自然智」はいずれひとつに結びつく ものなのさ、と考えている様子なのです。

(p.142)


Book Picks

【本】★★★★1/2
題名:カイエ・ソバージュ4: 神の発明
著者:中沢新一
(2003 /講談社選書メチエ271)

古代人の思考をこんなにイメージできたのは、初めてです。現代人の死生観とは、まったく次元が違う。まるで、平面だと思っていた地球が「実は丸いらしいよ」というレベルの衝撃でした。美術だ、科学だ、宗教だ、経済だ、すべてが繋がっていく。途中で本を閉じ「メビウスの輪」をつくり、帯の中心ラインで切れ目を入れる。不思議なことに裏と表がある輪ができる。そこに世界が変わる瞬間があった。








生死観が表裏一体した古代人の思考モデル

集落も生死が混在した面白い配置になっている

Book Picks

【本】★★★★1/2
題名:カイエ・ソバージュ3: 愛と経済のロゴス
著者:中沢新一
(2004 /講談社選書メチエ260)

経済を語った本は捨てるほどあるが、本質に迫った書籍なのでは、と興奮。欲望を通じて結びつく「愛」と「経済」。取っ付きにくいテーマと興味が尽きないテーマを融合させ、志賀直哉『小僧の神様』で読者を自然と惹き付ける運びは卓越している。古代の贈与関係と宗教、神話、マルクス、歴史を超えて浮かぶ、現代のトリックワールドの姿。本を閉じ、誰も気がつかない些細なものだけれど、大きな世界の装いの変化にそっと身を置いてみる。


ロゴス=世界を全体として捉える力

Book Picks

【本】★★★★
題名:カイエ・ソバージュ2: 熊から王へ
著者:中沢新一
(2002 /講談社選書メチエ239)

神話を介しての「対称性の思考」の解説はとても魅力的。かつて、人と動物の関係は思考上では結婚するほど密接で同等なものだった。お互いの存在を行き来で きる意識レベルに、あらためて驚く。中でも熊という動物が、いかに神聖で重要かが伺える。宗教が生まれる前の、「国」が出来る前の人のほうが、随分とまと もだったようです。形成する社会が「野蛮」という領域には足を踏み入れてないのですから。