『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.6

Life-日常から感じる世界とのつながり

ゲスト:

古屋典子(外務省・地球環境大使夫人)
池上清子(国連人口基金東京事務所所長)
北島大太朗(日本緑茶センター株式会社取締役)
生駒芳子(ファッション・ジャーナリスト)

命と深くかかわる衣食住からの視点からできることを考えてみる。ジャンルの異なる多彩なゲストを迎え日常をとらえなおしてみる。古屋典子さんは、外務省・地球環境大使夫人として7カ国に滞在した経験の持ち主。南アフリカ大使夫人という肩書きに個人としての存在のなさに戸惑いながらも、できることを一生懸命してきた食卓でのおもてなしの心が好評を得て、新たな活路へと繋がった。報道とは裏腹の南アフリカの美しい自然、そして途上国の子供たちの健康向上のための「手を洗おう会」の活動などを丁寧に話される。ふっと感じるプラスの空気をキャッチすれば、人生をより豊かにしてくれる貴重な出会いが待っていると気づいたという。柔軟にそして色々な価値観を持つ人との出会いを大切にしてほしいという力強いメッセージを頂く。

国連での豊富な経験を踏まえながら、世界の人口問題を分かりやすく解説してくれた池上清子氏。社会問題とされる先進国での少子高齢化社会、途上国では人口爆発による森林伐採や飢饉などは、人口のバランスが大きく左右している。人口問題対策として一番重要視されるのが、増加、減少といった数量ではなく、「社会を構成する一人ひとりの人間が、どこでどのように暮らし、どう子供を産み育てるか」(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)を守り、自由と意思によって子育てができる環境を整えることが大切だという。そして、途上国において人口問題と直接関わる妊産婦の劣悪な状況は時代を経ても、医療環境、社会的地位、サポート体制などの改善がなかなか難しいという。家族計画、母子の健康が人口問題の解決策のひとつであれば、未来を牽引していく先進国が率先して政策にもっと目を向ける必要があるという。だからこそ、税金の使い方にもっと注意深くなってほしい、そして選挙へ参加することが実は世界と繋がっているという説得力のある決めの一言は見事でした。

北島大太朗さんは、緑茶、ハーブティーなどの嗜好品の事業を展開しながら、まだBOPという言葉取りただされる以前からモロッコでの女性自立のための対策として行っているアルガンオイルの活動の紹介をする。「美白」「メタボ対策」をしながら、社会的貢献や砂漠の緑化にも寄与している女心や男心をくすぐる優れた商品。何も特別なことをしなくとも、社会貢献はできるという。

オルタナ生駒芳子さんは、VOGUE、ELLEなどのファション誌、2004年よりmarie claireの編集長を務めたのちに、ライフスタイルから展開できる社会貢献やアート活動など幅広く活躍する。大量生産により、ファストとファグジュアリーの二極化が顕著になった2000年以降、「何がいい、悪いか分からない状況」と指摘する。2005年からラグジュアリーライフとエコライフのバランスを考えたライフスタイル『エコ・リュクス』を提唱。ファッション業界の方が農業よりも水を多く使用し、大量のゴミも出すという。こうした事態を踏まえながら、買い物で世界を変えることが出来るのだと強調する。ものづくりを考える人が当たり前のことを考えるだけのことと言い切る。急に生活をシフトすることはできないから、少しずつ変えていくしかないという。「本当の企業のあり方」について新しい角度から切り込んでいる雑誌オルタナにも参加しておられ、意識の向上に務めている。


実は、子育てが一番の社会貢献なのよ

最後に、グッとくるメッセージが心に響く。


異なる分野のゲストの方々だが、生活を営むという視点では見事に響き合うものあった。社会貢献と肩に力を入れなくとも、意識を少し遠くまで広げ、人との関わりを大切にし、一日一日を丁寧に暮らすことが自然と未来を創っていくという、当たり前でおろそかにしがちなことを再認識するのでした。

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『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.5

現地の生活環境に配慮したデザイン開発

東京造形大学でサスティナブルプロジェクト専攻領域で教鞭をとる益田教授によるワークショップ。興味と意欲さえあれば実際に渡印視察も可能だとのこと。毎回ワークショップが行われている会場と展覧会との関係性も面白い。益田教授からインドでのアジア諸国での大気汚染やマスク使用率の現状、さらに国別によるマスク着用に関する抵抗感の違いなどが説明される。

マスクプロジェクトとしてプロダクト開発することを念頭に起きながら、10分間隔で参加者が各テーブルを巡るような形で議論を進めて行く。各テーブル1名だけを残し、80人ほどの人数が何度も大移動を繰り返す。繰り返すうちにみなさん慣れてくるようで、自己紹介そっちのけで「私は、こう思いますが、どうでしょうか?」とテンポよく議論がはじまる。プロジェクターで、「あなたは、なぜマスクをしますか?」といった問いが映し出され、議論のきっかけから問題の本質に迫っていく形式だ。なかなか考えられている。入れ替わり立ち代わり、たくさんの方々とやり取りをしていくと、シャイな日本人というのは、ひとむかし前の人種なのかもしれない。

シャップル時間終了後、流れ着いてできた即席のチームで、各自プランをまとめ、一人一案のマスクを張り出し発表する。現地の生活様式にマスクを近づけるためにストールにマスク機能をつけたもの、数学に強いインド人の気質に火を付けるようなドリル式チャレンジマスク、手袋に水かきのようなモノがついたものなど、発表を聞いているだけでいろんな考えの人がいて楽しい。

「マスク」を受け入れる社会の状況にあった取り組みのタイミングをデザインする。最初に、大気汚染の影響と「マスク」の重要性を知る。次に学習で理解を深め、自分たちで作れるのならやってみる、そして最終的に世界で共有できるようなアイデアを創造するというプラン。限られた時間でしたが、チーム一同大きな収穫を得ることができました。


『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.4

「形にしないワークショップ」 (その1)
若者の防災意識啓発、防災力向上のためにできること

地震EXPOEXIT TO SAFETY展でお世話になったプラス・アーツ主催によるワークショップ。参加者が各ジャンルから招待される形式になっているので、参加したくとも自分が参加できるとは思わなかった。しかし、みかんぐみの曽我部さんから「こういうワークショップがあってさ、興味あるなら参加してみない?」と連絡を頂く。すぐさま参加のご返事をする。人生のご縁やタイミングとは、なんとも不思議なものですね。

今回のワークショップでは、あえて「形にしない」ということを前提にしている。デザイナーが集い何かの成果としてアウトプットする企画にしてもらいたいと要望があったが、もうすでにプロダクトデザイナーの深澤直人氏、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏などそうそうたるメンバーが審査員を務めた『防災グッズコンペ』、各ジャンルのデザイナーが防災に関するプロダクトを提案した『EXIT TO SAFTY』(アクシスギャラリー)などを手掛けている経験があるからである。時間的制約などを考え、内容の薄い結果になるだけであれば、発想の枠を取り払い自由な対話を行う方が面白いし実験的だ、ということに至った経緯がある。

20代、30代のアート、建築、デザイン、都市計画、社会学、経済学といった分野から3~5名が選ばれ、3チームに分かれ議論を進めていく。2回に渡る全体会議が設けられているが、実質初回に顔合わせ、2週間遠隔でのやりとりをし、次の回でプレゼンテーションをするという、かなり無理のある内容。ですが、このような制約が逆に面白いのかもしれない。震災についての現状データやこれまでの活動内容を把握しておくために、事前にプラス・アーツ側から資料が送られている。イザ!カエルキャラバンや寄藤文平さんの地震イツモノートなど。

私はBチームに所属し、メンバーの方と議論をしていく。といっても固苦しくなく、フラットでおしゃべりのようなやり取りの中にアイデアが幾つも飛び出してきた。とても良い感触のする方々とのやりとりは、一体どこへ向かうのか楽しみです。

懇親会話足りない、オブザーバーの方の話をもっと聞いてみたいと、ワークショップ終了後も懇親会が設けられる。場所やお酒、座る位置でまったく違った関係性が生まれるから、空間は面白い。お酒がまったく呑めない体質なのですが、心地よくなっている方と心地よく過ごすのはとても好きなので、いろいろなお話を伺わせて頂きました。Bチームで上がっていた話題と絡めながらあれこれ考え夜は更けていくのでした。

人が一番面白いのかもしれない。



『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.3

問題を考え、世界の構造を体感してみるワークショップ

ワークショップ前半、世界の貿易構造を鋭くついた「貿易ゲーム」を参加者全員で体験する。ゲームとはいえ、よく考えられた内容に目からウロコが落ちる。後半は、活動するNGO団体の方々によるプレゼンテーション。

ゲームのルールは、配られた封筒の中にあるものを活用しながら現金とされるクリップを増やしていくもの。定規、A4用紙、鉛筆など。各チームの封筒の中身は、それぞれ違うが詳細は知らされていない。チーム内で、大統領、情報大臣、産業大臣、市民と役割を決める。情報大臣は、各チームに赴き交渉することができる。教室の前にはマーケットといわれる所が設けられ、発表された規格どおりに作られた、丸、三角、四角などの紙を持ち込み現金化することができる。ちなみに、マーケットが発表する取引価格は随時変更するので注意しなければならない。


変動するマーケットや紙資源を持っているチーム、分度器やハサミなどの道具をたくさん保有しているチームがあることが分かる。いくつかのチームが同盟を組んだり、マーケットから情報がよく流れているチームなど、みんな夢中になるほどに情報やコネクションを保守するようになる。ゲーム時間終了後、チーム内にある現金を計算し発表する。驚いたことに、一番多くのお金を保有しているチームは、マーケットから価格変動する前に情報を得ていたり、取引も他のチームよりも優遇されたことが発覚した。

配られた封筒、情報や仕組みなどに世界市場を反映させた事柄がぎっしりと詰まっている。参加者の多くがゲームに取り込まれてしまい、お金に我を見失ってしまったことなど、気づかされたことがあまりにも多くみな驚きを隠せない様子でした。お金を稼ぐことが全てなのか、ゲームの前に大領領が話し合うことは可能だったのか、一体、本当の問題はどこにあるのかなど、話題は尽きないのでした。

ワークショップ後半は、ヒマラヤの山岳地域で自然エネルギーを利用したソーラークッカーの普及活動をするジュレーラダック、途上国の子供達のサポート支援を多岐に渡り行うプラン・ジャパン、絵本や書物を通じて教育支援を行うシャンティ国際ボランティア会の発表が続く。現地のニーズを捉え実践的なすばらしいプロジェクトの数々。今までにない視点として印象的だったのは、日本の絵本に現地の言葉の翻訳シールを貼り子供たちに届けるものだった。一から新しいものを創るのではなく、そっと手を加えるというだけで充分にアクセスできる分野があったとは。可能性がどこまでも広がる気がするのでした。

『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.2

Practical design to Reduce Poverty
デザイン思考が生み出すイノベーションとは?

カンファレンスでもスピーカーを務めた、Ilona de Jongh 氏によるワークショップ。前半は、彼女がこれまで取り組んできたプロジェクトや、その中で培われた考えを紹介する。デザイナーが素材を選び、生産プロセスに関わることで大きく世界の構造を変えることができる。問題は、ごく身近なところでも、発見できると。綿密なリサーチ、技術、発想、教育、アート、食、いろいろな事柄を組み合わせプロジェクトにしてしまう力は、本当に圧巻です。


↑廃タイヤを使用した教育プログラム「Learning Landscape」


後半は、実践篇。今回のワークショップ用にアレンジされた「Learning Landscape」は、等間隔に並べられた椅子の座面に世界各地の首都が書かれた紙が置いてあるものだった。二つのチームに分かれて、椅子取りゲームのように一人づつ対戦型で争奪戦が開始される。「エジプト!」と叫ばれ、いちもくさんに「カイロ」と書かれた紙の椅子に突進する。我を忘れてみな興奮してしまう。参加者全員が和むのにさして時間はかからなかった。

その後、5、6名のチームになり、実際のデータベースを元にプロジェクトを企画し発表をする。既成の概念に囚われずに「GO!CRAZY」とアドバイスするイローナ氏。プレゼン用に紙コップ、紙皿、割り箸、模造紙などが配られる。一体どうなることやら…と思いながらも、蓋を開けると各チーム個性的で面白いプロジェクトに驚く。全プレゼンテーションが終了し質疑応答を続ける中と、とても深い問題まで至った。途上国を支援する場合に、本当はどこまで背景を掘り下げて考えなくてはいけないのか。先進国に搾取されるような農業や貿易の構図、政治的、歴史的背景も強く関わってくる。「幸福度」という点でも先進国の押しつけになっていないのだろうか。何を判断基準として支援をすれば良いのかなど、複雑に絡み合う状況が見えてきた。


デザインは力強い可能性を秘めている

Ilona de Jongh

『世界を変えるデザイン展』 ワークショップ  no.1

「Practical design to Reduce Poverty
社会・経済・環境に相互利益を生み出すデザインとは」

カンファレンスのスピ-カーでもあったデルフト工科大学のJan氏らによるワークショップに参加。通常3日間かけて行われるものを5時間まで短縮し、1つのプランまで落とし込むという挑戦的なものだった。チーム内には、起業家、リサーチャー、エンジニア、NGOの方など、今までお会いしたことのないタイプの方々ばかり。共同作業というのは、なかなか興味深いものがあります。

【 概要 】

本ワークショップでは、以下の2つの事例を通じ、顧客のニーズ、新しい価値の創出、コンセプション、事業モデルと市場定義の策定を通じて、統合的な商品開発イノベーションプロセスの紹介する。

・インドにおけるヘルスケアの事例
・カンボジアにおける再生可能エネルギーの事例

途上国の課題を理解し、先進国で使われている技術・機能・素材をいかに途上国の課題解決やサステナブルデザインに転用できるのでしょうか?

現地でリサーチをしていないため、与えられた情報でプランを組み立てなければならないのだが、このシュミレーションを行うことで、何を気をつけなければ行かないのか、どこが重要なポイントになってくるのかがおのずと見えてくる。メンバーの発言や提案は、結局はその人の経験と人となりと重なる。こうした気づきも、このワークショップの醍醐味なのかもしれない。

『世界を変えるデザイン展』 カンファレンス no.2

Design Innovation ~世界を変えているデザイナーたち~

Philip社、オランダのデルフト工科大学の意欲的な活動、そしてパワフルかつ茶目っ気たっぷりのIlona氏に魅せられしまう。若干25歳だとは思えないほど、明晰な思考と行動力をもった女性だ。当事者から実際に話を聞けるのは、日本発ではないだろうか。現場を踏まえた上で提案される様々なプロジェクトは、思考のボトルネックを取り払いアイデアをより自由な領域へ誘ってくれる刺激的な魅力に溢れていた。








01

「Lighting the World  ─インハウスデザイナーが創出するニューマーケット」


スピーカー:Frank Altena氏(Sustainability Director, Philips Lighting)

【概要】
Philipsは、2000年代より発展途上国をターゲットとした製品開発に取り組んできた。エネルギー効率の高い「光」のプロダクトを開発することで、生活改善、環境配慮、企業価値の創造を実現。フランク・オルタナ氏が、企業内デザイナーだからこそできる、デザインプロセスを語る。


02

「エマージング・マーケットにおけるデザインの可能性」
スピーカー:Jan Carel Diehl氏(デルフト工科大学
D4S(Design for Sustainability)プログラム助教授)

【概要】
発展途上国の人々と協働し、エンパワーすることで生まれるデザイン。カンボジアで活躍するkamworks(カムワークス)やアフリカの現場での事例を交えながら、エマージング・マーケットにおいて必要な「デザイン」の最前線を紹介する。


03

「デザイナーができること  ─DESIGN CAN CHANGE THE WORLD」
スピーカー:Ilona de Jongh氏(Sprout Design)

【概要】
「デザイナーには世界を変える力がある。デザイナーが素材を選び、設計することで生産プロセスが変わるのだから」と語るプロジェクトデザイナーのイローナ氏。彼女が全世界で、さまざまなプロジェクトを推進するなかで、感じたことを語る。