Book: 『ものづくり革命』

【本】★★★★1/2
題名:ものづくり革命 パーソナルファブリケーションの夜明け
著者:ニール・ガーシェンフェルド
(2006/SoftBank Creative)

20世紀初頭、フォードが開発した大量生産、大量流通、大量消費の図式から生み出された手法が、変わろうとしている。一人一台のパソコンを所有する時代が到来したときの、「ものづくり」とは。MIT(マサチュセッツ工科大学)で教鞭をとる著者が見据えた未来は、3次元プリンタなどの高度な技術が身近になることにより個人が自ら欲しいものを製造できるシステム、パーソナルファブリケーション(個人的なものづくり)。「(ほぼ)あらゆる物をつくる方法」は、NYのMoMAからインドのスラム街など、その土地のニーズに対応し可能性を秘めた事例が数多く紹介されている。「デザインの地産地消」という形を目の当たりにし、ユーザー、デザイナー、エンジニアなどの領域は、ますます曖昧になっていく。


*良書にもかかわらず、絶版本となっており復刊を呼びかけております。現在の状況では、電子書籍での復刊の可能性は高いです。ぜひ、この知識にアクセスできる環境づくりのご協力よろしくお願いします。


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Book: 『手の孤独、手の力』

【本】★★★★★
題名:手の孤独、手の力
著者:松山巖
(2001/中央口論新社)

「あなたは天の川を見たことがあるか」

ひとつの問いからはじまる物語。建築論、都市論などで知られる著者だが、ジャンルをまたがり丁寧に描こうとしていることは「人の営み」。夜空を見上げ五感の快楽を覚える建築論を綴りながら、またふと夜空を見上げる。人に興味を抱く著者だからこそ、ダイアン・アーバス、坂口安吾、幸田露伴、文、掃除、におい、言葉、正岡子規らなど話題は尽きない。詩を語り、小説を語り、空間を語り、そして手を語る。何を語ろうとも一貫した姿勢がある。何度も読み直し、何かに迷ったとき、きっと手を伸ばし開くことになるだろう。頁をめくる度に、自分が内包する時間も歩みを進められた気がした。


失われたのはもとより天の川そのものではない。失われたのは天の川という言葉でもない。天の川を見て、聴いて、味わう感受性なのだ。一人ひとりがその感受性を失ったとき、いつの間にか天の川は見えなくなった。

(p.138)

Book

【本】★★★★
題名:自然と生体に学ぶバイオミミクリー
著者:ジャニン・ベニュス
(2006/オーム社)

バイオミミクリーとは、自然界のモデルを研究し、そのデザインとプロセスを模倣したり、そこからインスピレーションを得て、人間界の諸問題を解決する新しい科学のこと。そして、自然界で培われた38億年の生命進化によって淘汰されたことを評価基準としている。自然を搾取するのではなく、なにを学べるかという姿勢がある。専門的な書籍なので難しいところも多々あるのですが、私が一番気になったことは、動物と人間の本能的な自然への適合能力でした。動物が自然とより近い身体性をもっているのは、食べ物に対して適応能力を持っているから。『火の賜物』という書籍で、火は人間を進化させていると思っていたが、もしかしたら大きな間違いなのかもしれない。火によって自然から切り離された人間は、進化という退化の道をひたすら進んでいるようにも思えてくる。だからこそ自然から学ぶことがより一層重要になってくる。小さな貝殻、ヒトデ、海綿、クモの巣、自然のあらゆるものにものすごい可能性を感じてしまう。


経済と文化をより持続可能な方向に転ずるのにもっとも強力なテコとなるのは、デザインかもしれない。デザイナーとは、製品の機能性だけではなく、製品の個性をつくり出す人たちです。アール・デコ調のランプからキャデラックのテールフィン、ユーロスタイルのバング・アンド・オルフセンのステレオにいたるまで、デザイナーは社会の夢と抱負、つまりわれわれの現在の姿と将来の理想を捉える修行をする必要があるのです。(p.368)


Book Picks

【本】★★★★★
題名:HEAVEN&EARTH
(2002 / PHAIDON)

心の中で「出会えてよかった!」と思わず叫ぶ。「分けられないこの世界」を俯瞰できる、本当に素晴らしい写真集です。ページをめくる指先とともに、目頭が 熱くなっていた。

細胞、シナプス、精子、花粉、種子、地球、太陽、銀河系へと続くミクロからマクロの写真の羅列により、一対多の森羅万象の世界が現れる。「ああ、そういう ことなんだ」と言葉が後からついてきた。


生物学者や天文学者には、審美眼を持っている方が多いというのもうなずけます。
人が創り出せる領域とはまったく違う圧倒的な次元。

「美」の断片の数々を前に、しばし茫然とするのでした。

Book Picks

【本】★★★★★
題名:アッキレ・カスティリオーニ
自由の探求としてのデザイン
著者:多木陽介
(2007/AXIS)

カスティリオーニの世界観が、見事にまとめられている。通訳としてデザイナーと関わり始めた著者の文章力もこれまたすばらしい。プロダクト、照明器具、展 示空間、建築と多岐に渡る活動が詩的な解説で綴られ、ストーリーテラーとして次々と飛び出すモノや空間。もっと自由に、そして日常を見つめる眼差しの大切 さをユーモアを交えて教えてくれる。本の装丁に思わず笑みもこぼれてきたり。




この文章の締めくくりに読者に一つ提案がある。カスティリオーニのつくった物やプロジェクト(デザイン)に ある古典としての価値を見い出すために、カルヴィーノがその著作『なぜ古典を読むのか』の中で挙げている、ある本を古典と言えるためのいくつかの条件を定 義する文のなかの「本」「書物」という言葉を「物」あるいは「プロジェクト(デザイン)」という言葉に置き換えて読み直して欲しいいのだ。いかにいくつか 例を挙げる。

1.
古典とは、読んでそれが好きになった人にとって、一つの豊かさとなる本(物)だ。しかし、これをよりよい条件で初めて味わう幸運にまだめぐりあっていない 人間にとっても、おなじくらい重要な資産だ。

2.
古典とは、忘れられないものとしてはっきり記憶に残るときも、記憶のなかで、集団に属する無意識、あるいは個人の無意識などという擬態をよそおって潜んで いるときも、これを読むのにとくべつな影響をおよぼす書物(物)を言う。

3.
古典とは、最初に読んだときとおなじく、読み返すごとにそれを読む事が発見である書物(物)である。

4.
古典とは、初めて読むときも、本当は読み返しているのだ。

5.
古典とはいつまでも意味の伝達を止めることができない本(プロジェクト/デザイン)である。

(古典としてのアッキレ・カスティリオーニより)

「デザインというのは一つの専門分野であるというよりは、むしろ人文科学、テクノロジー、政治経済などにおける批評力を個人的に身につけることから来る態 度(世界や仕事に対する取り組み方)のことです」

(p.20)

Book Picks

【本】★★★★1/2
題名:未現象の風景
著者:倉俣史朗
(1991 / 住まいの図書館出版局)

現在、第一線で活躍されているデザイナー、建築家の方々で、この方に少しも影響されていない人を探す方が難しいのでは。本書で語られているのは、少年時代 に身体いっぱいで感じたこと、心に残った風景、見た夢の数々。コンセプトうんぬんではなく、創造の原風景があった。作品群が交互に現れるのも、夢の続きの ように見えてる。”How High the Moon” ”Miss Blanche”などの詩的な作品たちといつかの風景がつながっていく。小説のような作品集、作品集のような小説、ふわりと境界を飛び越える素敵な一 冊。


ぼくはあえて分析せず楽しむことにしています。 また、夢は養分であり、現実であり、解放区でもあると思っています。(p.182)

Book Picks

【本】★★★★
題名:THE OUTLINE
著者:深澤直人 藤井保
(2009 / アシェット婦人画報社)

『THE OUTLINE 見えていない輪郭』展は、行くには困難なので書籍を取り寄せる。モノが語るというより画面全体からそっとささやきかけてくる写真の数々。語られている言葉 と生み出されているモノにブレがない。頁をめくりながら、こんな素敵な方々が日本で活躍されていることに嬉しくなり、一方でもっと丁寧に生活せねばと反省 してしまった。

みんなが知っているけど見えていない輪郭、
日常、社会、未来を見据えた可能性というアウトライン。