Book Picks

【本】★★★★★
題名:三島由紀夫レター教室
著者:三島由紀夫
(1991/筑摩書房)

手紙つながりで、面白い本を紹介。三島由紀夫の印象が変わる小説。筆まめ5人の文通だけで物語が進んで行くというユニークな構成で、お礼のお手紙、告白、相談、脅迫など、手紙の持つ独特の ニュアンス、説得力が余す所なく発揮されている。登場人物も個性的です。







1.氷ママ子(45歳)
英語塾経営者 元美人のかなり太めな未亡人

2.山トビ夫(45歳)
有名なファッションデザイナーだけどキザで皮肉屋

3.空ミツ子(20歳)
ママ子の生徒だったが、英語のセンスは無し、仕事もミスが多い、
でも明るい笑顔なので人からは憎まれないお得な性格の持ち主。ピチピチと音がしそうな若さも魅力。

4.炎タケル(23歳)
お金はないけど芝居の演出の勉強をしている大まじめで理屈っぽい青年
暇はないが手紙だけはよく書く。

5.丸トラ一(25歳)
テレビ大好きのまるまる太った楽天家
空想の中では、自分が世にもスマートな青年だと想像している。

ママ子の手紙から5人のやりとりが始まり、手紙を通じてサバサバしたお付き合いを楽しんでいるかと思いきや、ドロリと腹黒さを見せてくれたりもする。人間 模様を浮き彫りにする手紙のやりとりはなかなか興味深い。

手紙のタイトルだけみると凄いのばかりですが、こんなにも軽快に書けるものかと読み応えあり。(人生でこのような手紙を書く機会がないことを願うばかりで すが…)

「借金の申し込み」
「同性への愛の告白」←これはなかなか勉強になりました!(女性必読)
「愛を裏切った男への脅迫状」
「招待を断る手紙」
「恋敵を中傷する手紙」
「心中を誘う手紙」…etc

ちゃんとレター教室になっているから、不思議です。

最後の「作者から読者への手紙」は、一度読んでおくと手紙の考え方がぐっと広がる気がします。